「代表クラスの選手がたくさん抜けた中で、昨シーズンよりも試合に関わりたいという気持ちでシーズンに入りました」という今シーズンは本職のFWではなく、サイドやウイングバックでプレーしている桑原藍。シーズンの最初は苦しんだ時期もあったというが、「今は吹っ切れたというか。練習の中でいいプレー、自分のプレーが出せたらジョルディ フェロン監督は試合に使ってくれると思えたので、自分らしく頑張れたらなと思っています｣。そう気持ちを切り替えたこともあり、10月14日(月･祝)に行われた2024-25 SOMPO WEリーグ第5節・ノジマステラ相模原戦では3アシスト、直近の2024-25 WEリーグ クラシエカップのジェフユナイテッド市原・千葉レディース戦でも1アシストをマークする活躍を見せている。

この好調ぶりについては、「自分のクロスが良くなくても愛川 陽菜選手や成宮 唯選手らが決めてくれるので、中の人たちがすごいです」と謙遜するが、もちろんそれだけではない。「分からないことは何でも聞きます。『もう1個ポジションを絞ったほうがいいですか？』とか本当に細かいことでも聞くようにしていますし、昨季の試合の北川 ひかる選手のプレーや男子プロリーグの試合など、様々なな試合を見るようになりました。試合に出られるなら何でもやりますよ」と試合に出続けるため、成長を止めないために貪欲に学んでいる。

その中でも特に、「先輩からのアドバイスは素直に聞くということを一番大事にしています」という。実際にこの姿勢が数字につながったのが、クラシエカップ・千葉L戦でのアシストだ。「ああいう状況になった時にニアにパスを出すことが多かったですが、練習中に山本 摩也選手に言われていた『絶対にマイナスが空くから』という言葉がずっと頭に残っていて、それでマイナスをふと見たら愛川選手がいて空いていた。あれは山本選手のおかげです」。謙虚な姿勢は崩さないが、素直に受け入れ、それを実行できる力があることも彼女の強みの一つだろう。

また、試合に関わる回数が増えたことで、「チームに貢献したいという思いはより強くなりました。チームのために自分ができることを一生懸命やろうという思いになっています」と意識も変化。「左からのクロスのアシストはもっと増やしたいし、自分でも得点を狙えるように頑張りたいです」と勝利に貢献するために、チャンスメーカーとしての思いもより強くしている。

リーグ6連勝が懸かるアルビレックス新潟レディース戦。「ベテラン選手や経験豊富な選手が多いので、何をやってくるのか分からないという印象があります。サイドの選手もアタッカーが多くて、一対一の守備とかが多くなると思う」と新潟Lを警戒するが、「守備では自分の課題である一対一、球際のところで負けないこと、攻撃では得点に絡めるように、チームの勝利に貢献できるように頑張ります」と攻守両面での活躍を誓ってくれた。

そんな桑原の今シーズンの目標はというと、「チームとしては3冠を目指したいです。個人では今5アシストなので8アシスト、得点は3で！」と個人目標は控えめ。同学年のGK 大熊 茜選手がなでしこジャパン入りしたこともあり代表への思いも聞いてみたが、「代表に呼ばれたらうれしいですし、呼ばれるように頑張りたいですが、まずはチームだと思います。そこが基盤。チームの中でしっかりと自分のポジションを勝ち取ることが、その第一歩になると思っています」

まずはチームで試合に出て活躍すること。その強い思いを胸に、桑原は奢ることなく堅実に自分の現在地を見つめながら、与えられたポジションでの役割を全力で全うしていく。


【スポーツライター・金子裕希】