今シーズン、2季ぶりにキャプテンに就任し、顔ぶれが大きく変わったチームをけん引してきた三宅史織。開幕前は、「責任を背負い過ぎず、周りを頼りながら、みんなと一緒に戦っていきたい」と話していたが、実際に始まってみると「実践したことはそれほどないです」という。なぜなら、「監督もすごく熱い監督なので、そこで気が引き締まる部分もありますし、みんなが頼もしくなってきたからあまりすることがないなっていう感じです（笑）」とのこと。若い選手も多く試合に出ている中で、「みんな責任感のあるプレーをしてくれているというか。（太田）美月もやってはいけないプレーをそんなにしないですし、（井手）ひなたは（守屋）都弥が海外移籍でいなくなってまた違うポジションになりましたけど、そこで自分のプレーを見せながらすごく責任を持って戦っているのは見ていて分かります。（愛川）陽菜や（桑原）藍、（水野）蕗奈とかも1本シュートを外した時の表情などを見ていると『自分が決めなければいけないんだ』という1点の重みを感じながらサッカーをしてくれているのを感じられます」
 
そんな頼もしい選手たちと戦ってきた今シーズンは当初、「代表選手がいなくなり、昨シーズンと比べてメンバーが大きく変わった中でどうなるのか、というのは自分たちも心配でした」。それでも、シーズン前半はうまくいかない試合でも粘り強く戦い、第11節のセレッソ大阪ヤンマーレディース戦で敗れるまで無敗で勝点を積み重ねてきた。リーグ後半再開前には右サイドで存在感を放っていた守屋が移籍。再構築を余儀なくされたものの、「今年は右、左、真ん中とまんべんなく攻撃でき、コンバートされた選手もフィットしてきたことでみんながやりやすい状態でプレーできていると思います。それと後半戦はビルドアップだけではなく、フィジカルの強さ、高さ、速さをうまく使え始めています」。三菱重工浦和レッズレディース、サンフレッチェ広島レジーナとの一戦は試合を支配しながらも決定機を決め切れず敗戦したが、「正直、内容的にも負ける試合ではなかったと思いますが、強い相手に戦える姿を見せられたからこそ、他のチームに対して『INACはこのまま終わらないぞ』ということを感じさせることができたと思いますし、前節のベレーザ戦ではやっていることが間違っていないことを証明できたと思います」。そう話したように、首位に立つ日テレ・東京ヴェルディベレーザとの大一番ではインテンシティ高くアグレッシブに戦い2－0で勝利。得失点差で首位浮上とはならなかったが、勝点45で並び優勝に望みをつないだ。
 
大混戦となったリーグ戦も残すところあと2試合。「自分たちは本当に勝つしかないので、１試合ずつ大切にしっかり戦っていかなければいけない」という中で迎えるホーム最終戦は、マイナビ仙台レディースと対戦する。「試合の入りが大事になると思っています。監督からは『この前の試合（東京NB戦）みたいに入らないと足元をすくわれるぞ』と言われていますし、油断している選手は本当に誰もいないので、みんなギラギラと戦えるのではないかなと思います。前節みたいにガツガツ戦って、最初に１点を取って流れに乗りたいです。観に来てくれたファンやサポーターの方がいい気持ちでその日を終われるように圧倒して、また観に来たいと思ってもらえるような試合をしたいと思います」と穏やかな口調ながらも闘志を燃やす。
 
5月1日には2シーズン指揮を執ったジョルディ フェロン監督の退任が発表。「本当にいろんなことを教えてくれたので、寂しいですね。ビルドアップがすべてではなく、ゴールを奪うために逆算しなければいけないことをしっかり植え付けてくれましたし、流れが悪かったら前に蹴ってそこから守備に入って前からいこうとか、そういうことも教えてくれました。何よりチーム一丸となって戦うこと、その強さを教えてくれた監督だと思うので、チーム一丸となったら何かが起きるんだぞということを証明したいです。このメンバーで結果を残していて率直に『すごい』と思いますし、優勝して、監督には『俺は優勝監督だ！』ってスペインでずっと騒いでいてほしいです（笑）」
 
逆転優勝するためにも、退任する指揮官の花道を飾るためにも、キャプテンとしてピッチでやるべきことをしっかりとやりながら勝利を目指し、最後まで戦い抜く。
 
【スポーツライター・金子裕希】