「リーグ全体を見渡しても、最も活躍している選手の一人だと思います。」ジョルディ フェロン監督がそう手放しで称賛を送るのが、FWの愛川陽菜だ。2024-25 SOMPO WEリーグの前節、10月6日(日)に行われたホームでのAC長野パルセイロ・レディース戦は、1ゴール1アシストの大活躍。その3日後の2024-25 WEリーグ クラシエカップ・ちふれASエルフェン埼玉戦でも鮮やかなループシュートを沈め、好調ぶりを見せつけている。
 
　活躍できている要因について、愛川は「開幕前にトレーナーの方と相談して、スプリントのメニューを多くこなしていました。それが良かったのかもしれません。」と言い、「今は体も軽く感じられています。」と自信を覗かせる。加えて、食生活にも気を遣っているという。昨シーズンはフィジカル強化のため、食事量は意識的に増やしていたが、試行錯誤した末に今はいったん食事量を増やすことは控えつつ、ウエイトトレーニングのやり過ぎにも注意しているそうだ。それは「自分の特長が消えてしまうと良くないと思うから。」ただ、「おかずを食べる量は増やしていて、チームトレーニングのあとにできる日は個別でスプリントのメニューをしている。」と、その日その日の自身のコンディションを考慮しながら調整に努めている。
 
　好調の要因は他にもあると打ち明けてくれた。それは9月にヤングプレーヤーデベロップメントコーチに就任した大野忍コーチの存在だ。「自分のプレーについて、課題を含めいろいろとアドバイスをしていただいています。それが面白いように当たっていて、大野さんから言われたことを意識したら、いいプレーにつながることが多いんです。」その一つが、相手をよく見てプレーすること。相手の重心や体の向き、視線など、ボールを持っているときはもちろん、持っていないときでもよく観察し、それをプレーの判断の材料にすることが好結果につながっている。
 
“見ること”の対象は相手だけではない。パスを受ける前に味方のポジションをしっかり確認することも、より意識付けしている。そうすることで「以前よりは頭の回転が少し速くなったと感じるし、プレーの判断やスピードも上がった気がする。」と手応えを語る。
 
そして、何よりも大きいのが「勝ちたい気持ち、チームに貢献したい気持ちが強くなっている。」ことだ。今季の最初の試合、2024-25 WEリーグ クラシエカップのセレッソ大阪ヤンマーレディース戦とその次の ちふれASエルフェン埼玉戦は、「自分のプレーは全く満足できない内容だった。」と不甲斐なさを感じた。「昨シーズンもそういう気持ちは感じましたが、やっぱり勝ちたいし、いいプレー見せたい。その気持ちが強くなっているので、それがプレーに出ているのかなと思います。」
 
　リーグ4連勝を懸けたノジマステラ神奈川相模原戦。「チームの勢いは出てきていると思うので、その勢いのまま勝ちたいです。」と話し、勝つためのポイントの一つは、「相手はある程度、ロングボールを使ってくると思うので、セカンドボールを拾えるかどうか。」とイメージする。その上で「個人としてもゴールやアシストをまた決めたいと思っています。」と宣言。とはいえ、自身のゴールにはそれほど固執はしていないという。意識するのは、「チームが勝つために自分ができるプレーを全うすること。」ゴールはもちろんだが、アシストも、前線からの守備も、そのプレーが勝利につながれば、「どれも同じくらいにうれしいですよ。」と笑う。
 
　力まず、肩の力を抜いて、自分のできるプレーを全力でやり切る。そして、チームメート、ファン・サポーターと勝利の喜びを分かちあいたい。その思いを原動力に、愛川陽菜は今節もピッチを駆ける。
 
【株式会社ライブドア・山本剛央】